「改正民法(令和5年4月施行)が遺産分割へ与える影響」 |葛飾(金町・水元・新小岩)で相続、遺産分割を弁護士に相談

「改正民法(令和5年4月施行)が遺産分割へ与える影響」

「遺産分割を長期間行っていない場合、どのような問題が起きますか。」
「遺産分割を行わないと何かデメリットがあるのでしょうか。」
 
このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。
このコラムでは、2023(令和5)年4月施行の改正民法が遺産分割へ与える影響をご説明します。
 

1 相続制度の見直し

令和3年4月21日成立の「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)により、民法の一部改正が行われました(施行日は2023(令和5)年4月1日)。
改正の概要は、相隣関係規定、共有制度、所有者不明土地管理制度等、相続制度の見直し等です。
このうち、相続制度の見直しについては、以下のような改正が行われました。
 

  • ①長期間経過後の遺産分割の見直し
  • ②遺産共有持分が含まれる共有物の分割手続の見直し
  • ③相続財産の管理に関する規律の見直し
  • ④相続財産の清算に関する規律の見直し

 
本コラムでは、上記①について解説を行います。
   

2 長期間経過後の遺産分割の見直し

⑴ 遺産分割の基本的なルール

まず、前提として、相続が発生し、相続人が数人いるときは、遺産(相続財産)は相続人の共有状態になります(民法898条)。
このとき、相続人は、遺産について共有持分を有しています。
この共有状態を解消し、誰がどの遺産をどれだけ取得するのかを決めることを遺産分割と言います(民法906条)。
相続人は、遺産分割前は法定相続分(※1)又は指定相続分(※2)に応じた共有持分を有していますが、その分割は、被相続人(亡くなった方)からの生前贈与等の特別受益や被相続人への寄与分を加味し、法定相続分又は指定相続分の割合を修正して算出する具体的相続分の割合により実施することとされています(民法900条~904条の2)。
平たくいうと、寄与分(被相続人の財産の維持や増加に貢献したこと)がある相続人は、その分だけ多く遺産を相続でき、特別受益(被相続人が亡くなる前に財産をもらったこと)がある相続人はその分だけ相続できる遺産が少なくなるというものです。
※1 法定相続分=民法であらかじめ定められている相続分
※2 指定相続分=遺言で指定された相続分
 

⑵ 改正前民法の問題点

改正前民法では、具体的相続分による遺産分割を求めることができる期間には制限がありませんでした。
そのため、遺産分割をせずに長期間放置していても相続人には直ちには不利益が生じないため、相続人が早期に遺産分割を行うインセンティブ(動機)が働きにくい状態でした。
その結果、相続開始から長期間経過することで、具体的相続分の算定が困難になったり、遺産分割がされないまま遺産共有持分を有する相続人がさらに死亡する事態(数次相続)が繰り返されることによって、共有者の数がねずみ算式で増えていくことが問題となっていました。
 

⑶ 改正民法による見直し

そこで、改正民法は、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割については、次の(ア)又は(イ)の場合を除き、具体的相続分ではなく、法定相続分(遺言による相続分の指定がある場合は、指定相続分)による遺産分割を行うこととなりました(新民法904条の3)。
つまり、相続開始から10年を経過した場合、原則として特別受益や寄与分の主張を行うことができなくなります。
 

  • (ア)相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求したとき(同条1号)
  • (イ)相続開始の時から始まる10年間の期間の満了前6か月以内の間に、遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき(同条2号)

 

⑷ やむを得ない事由

上記(イ)の「遺産分割を請求することができないやむを得ない事由」の有無は、個々の相続人ごとに判断されます。
例えば、相続人Aにはやむをえない事由があるが、相続人Bにはやむを得ない事由がないというケースにおいて、具体的相続分による遺産分割をするためには、A自身が、やむを得ない事由が消滅した時から6か月を経過する前に遺産分割の請求を行う必要があります。
また、「やむを得ない事由」は、相続人において相続開始の事実(被相続人の死亡)を知らなかったといった単なる主観的事情により直ちに認められるものではなく、相続人において遺産分割を請求することが期待できない客観的な事情が必要であると解されています。
具体的には、以下のような事情が「やむを得ない事由」にあたると考えられます(村松秀樹=大谷太『Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法』249頁(一般社団法人金融財政事情研究会、2022))
 

  • 〇被相続人が長らく生死不明であったが、遺体が発見され、10年以上前に遭難して死亡したことが判明したなど、被相続人の死亡をおよそ知ることができないケース
  • 〇被相続人が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にあるが、成年被後見人が選任されていないケース
  • 〇遺産分割の禁止の特約や審判があるケース
  • 〇相続開始後10年が経過してから有効に相続の放棄がされて相続人となった者があるケース

 

⑸ 適用

上記の新民法904条の3の新ルールは、改正民法の施行前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても適用されることになっています(改正法附則3条)。
もっとも、経過措置により、新民法904条の3第1項1号・2号の基準時について、5年の猶予期間を設けています(同上)。
つまり、施行時において既に相続開始から10年が経過している場合、相続開始時から10年を経過するタイミングが施行時から5年を経過するタイミングよりも前の場合については、施行時から5年の猶予期間が設けられています。
 

3 当事務所の遺産分割の弁護士費用

遺産分割の詳細内容は、こちらをご覧ください。
 

4 遺産分割の問題を弁護士に依頼するメリット

⑴  誤りなく法的手続を迅速・確実に進めることができる

遺産分割の問題は、何が遺産に含まれるか、隠されている遺産はないか、遺産はどのように評価すべきか(固定資産税、路線価、実勢価格等)、生前お金をもらっていた(あげていた)場合の調整等、考慮しなければならない要素が非常に多く、法的に正確な知識を要します。
特に、本改正により、生前にお金をもらっていた・あげていたといった事情を考慮できるか事案ごとに逐一判断のうえ、主張を検討する必要が出てきました。
そのため、なかなか個人ですべての問題点に適切・迅速に手続を進めることは困難な場合が多いと思われます。
弁護士に依頼をした場合は、手続が遅延しないよう配慮しながら、迅速・確実に手続を進めることができます。
 

⑵  直接やりとりをすることがなくなるので、交渉や手続等の精神的な負担を大幅に軽減できる

弁護士に依頼をした以降は交渉の窓口は弁護士になります。
そのため、直接揉めている相手方とやりとりをすることがなくなるため、ストレスを大幅に軽減することができます。
また、こちらの主張を受け入れてもらうためには、その伝え方や主張の順番等を考慮しながら手続を進めることが重要です。
どのように交渉を進めるとより適切な解決に導けるか、弁護士は常に考えながら手続を進めます。
ご自身で法的な知識の側面以外に、そのような点も配慮しながら手続を進めることは負担が大きく、それを弁護士に肩代わりさせられる点は大きなメリットといえます。
 

⑶  遺産分割の複雑な問題について、説明を受けつつ、納得しながら進めることができる

遺産分割の問題は、様々の法律分野の中でも、かなり複雑な計算や論点を含みます。
金額も高額になる場合が多く、特に慎重に問題点を一つ一つクリアしていく必要があります。
弁護士に依頼した場合は、ご依頼者の方と二人三脚で手続を進めることになるため、しっかりと今何が起きており、何が問題(争点)になっていて、弁護士はどのように考えるか、をお伝えしながら進めていきます。
そのうえで、ご意見を聞きながら、弁護士の専門的知見・経験をも踏まえたご納得のいく解決を一緒に考えながら進めてまいります。
 

⑷  法的な知識を知っているか否かで取得金額が変わる場合があるため、適切な解決金額にて遺産分割の問題を解決できる

遺産分割の問題は、知識を知っているか知らないかで取得額が変わる見落としがちな問題を多く含んでおります。
一例ですが、遺産として見落としがちな財産を漏らさず分割すること、遺産の評価額を相手方の言い分・言い値ではなく法的に正しい額に定めることや生前被相続人からお金をもらっていた(あるいはあげていた)場合の調整を行うこと等があげられます。
このような点を自己判断しながら手続を進めた結果、本来は得られたはずの利益を失うことになってしまったというケースも、これまで複数件見て参りました。
後で後悔をしないためにも、遺産分割の問題の解決に必要な法的知識を総動員し、適切・妥当な解決を目指すことは非常に有意義といえます。
 

⑸  交渉以外の調停、審判、訴訟などの手続についてもそのまま任せることができる

遺産分割の問題を取り扱う専門家としては、行政書士、司法書士、税理士、ときには、相続診断士といった方々がおります。
それぞれ、プロフェッショナルな領域をもっていると思いますが、調停、審判、訴訟といった裁判所の手続を利用することができるのは弁護士のみです。
また、紛争性のある交渉を担当することができるのも弁護士のみです。
弁護士は、交渉がまとまらない場合でも、手続きの最後まで伴走し、お力添えすることが可能です。
 

⑹  税務や登記などのケアを踏まえた解決を目指すことができる

弁護士にもよるとは思いますが、当事務所の代表は税理士資格を有しており、税理士、社労士、会計士向けの各所轄の会の相続研修講師を務めております。
そのため、税理士をはじめとした他士業との連携が可能です。
弁護士に相談するだけで、希望があれば、適切な税理士や司法書士の紹介をうけ、ワンストップで問題を解決することが可能です。
逐一、相続に強い税理士や司法書士をイチから探す手間が省けることは大きなメリットといえます。
※もちろん、あくまでも紹介をするだけですので、フィーリングが合わなければ当然ご依頼をなさる必要はありません。
 

5 おわりに

遺産分割の問題の費用は事案により様々です。
こちらの記事をみたとしても、実際にいくらなのかはイメージが付かない場合もあるかもしれません。
遺産相続分野の弁護士費用を含め、何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
 

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この記事の著者

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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