「遺産分割調停の管轄裁判所はどこ?遠方の場合の参加方法も併せて解説。」
遺産分割
「遺産分割調停の申立てを行いたいのですが、どこの裁判所に申立てを行えばよいでしょうか。」
このような質問をお客様から寄せられることがあります。
このコラムでは、遺産分割調停の「管轄」について弁護士が解説いたします。
目次
1 遺産分割調停の管轄裁判所は相手方の住所地が原則
遺産分割調停の管轄裁判所は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。
例えば、申立人が東京都、他の相続人である相手方が大阪市に住んでいる場合、管轄裁判所は相手方の住所地を管轄する大阪家庭裁判所になります。
また、相手方が複数人いる場合は、そのうち1人の住所地の管轄裁判所を選ぶことができます。
例えば、申立人が東京都、他の相続人が大阪市、福岡市、横浜市に住んでいる場合、管轄裁判所は大阪家庭裁判所、福岡家庭裁判所、横浜家庭裁判所のいずれかになり、申立人は自由に選ぶことができます。
2 相手方の住所地以外の裁判所で遺産分割調停はできないのか
遺産分割調停の管轄裁判所は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が原則となりますが、次の場合は、相手方の住所地以外の家庭裁判所に申立てを行うことができます。
②申立てを受けた管轄外の裁判所が自庁処理を認めた場合(家事事件手続法9条1項ただし書)
⑴ ①の場合について
遺産分割調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所のほか、当事者が合意で定める家庭裁判所でも行うことができます(合意管轄といいます。)。
ただし、合意管轄の家庭裁判所に申立てを行うには、当事者全員で合意した「管轄合意書」を家庭裁判所に提出する必要があります。
⑵ ②の場合について
家事事件手続法9条1項ただし書は、次のとおり定めています。
ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。
遺産分割調停の申立てを受けた家庭裁判所は、管轄外であったとしても、事件を処理するために特に必要があると判断した場合は、自ら処理をすることができます(自庁処理といいます。)。
ただし、自庁処理は例外的な取扱いであり、例えば次のような場合です(梶村 太市、徳田 和幸『家事事件手続法〔第3版〕』(有斐閣、2016年)170頁参照)。
- ① 地理的条件・交通機関との関係で申立てを受けた家庭裁判所の方が時間的・経済的に便利な場合
- ② 調査や審問等に必要な参考人などが申立てを受けた家庭裁判所の近くに多数居住している場合
- ③ 申立人が身体的障害から相手方住所地の家庭裁判所に出頭し難いのに対し相手方にはそうした事情が存在しない場合
- ④ 以前に関連事件を処理しており申立てを受けた家庭裁判所が事情をよくわかっている場合
3 管轄裁判所が遠方の場合の対応方法(電話・テレビ会議システムの利用)
遺産分割調停は、1回の期日で終了することは通常考えられず、事案にもよりますが5~10回程度期日が実施されることがあるため、管轄裁判所が遠方の場合は負担となります。
そこで、できるだけ負担を減らすために、電話・テレビ会議システムを利用することが考えられます。
当事者が遠隔の地に居住している等裁判所が相当と認める場合は、家庭裁判所と当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法(電話・テレビ会議システム)によって調停を行うことが可能です(家事事件手続法54条1項・同法258条1項)。
これはすなわち、遺産分割調停が那覇家庭裁判所で実施されますが、当事者の一人のAさんが東京に住んでいる場合、Aさんは東京家庭裁判所に出頭して電話・テレビ会議システムを使って調停に参加できるというものです。
なお、遺産分割調停の対応を弁護士に依頼した場合、家庭裁判所に出頭することなく、弁護士の事務所からパソコンを利用してオンラインで調停に参加することが可能です。
4 遺産分割調停に関する当事務所の弁護士費用
遺産分割調停に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
詳細はこちらまで。
5 まとめ
本コラムでは、遺産分割調停の管轄や管轄裁判所が遠方の場合の参加方法について解説しました。
特に、管轄裁判所が遠方の場合は、お近くの弁護士に依頼することで裁判所までの出頭負担がなくなるため、非常にメリットがあります。
遺産分割について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
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