弁護士法人葛飾総合法律事務所

「遺産の一部分割と遺産分割前に預貯金を引き出す行為の可否」

遺産分割協議書

「遺産の一部だけを先に分割することは可能でしょうか」
「金融機関に親の死亡を伝えたところ、口座が凍結されてしまいました。葬儀費用や病院代を支払う必要があり、大変困っております。」
 
このようなご質問をいただくことがあります。
このコラムでは、遺産の一部分割が可能かどうか、遺産分割前に預貯金を引き出すことが可能かどうか、そして一部分割を含む遺産分割の弁護士費用の相場と当事務所の弁護士報酬基準についてご説明します。
 

目次

遺産の一部分割について

遺産の一部分割は可能か?

遺産分割の実務上、これまでも(一定の要件の下で)遺産の一部分割は行われてきました。
もっとも、実は、法律上、一部分割を可能とする明文の規定が存在していなかったため、民法改正で「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。」(民法第907条第1項)と新たに規定されました。
一部分割を行う場面としては、遺産の範囲について相続人間で訴訟が係属しているなど争いはあるものの、遺産であることに争いのないものについては先に分割する場合や、不動産の遺産分割には意見の食い違いがあり時間がかかるものの預貯金については法定相続分で先に分割する場合などが想定されています。
 

この改正に伴い、家庭裁判所における遺産分割調停においても遺産の一部の分割を請求できる旨が明文化されました(同条第2項前段)。

もっとも、「遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」もあり得るので、そのような場合における一部分割については、請求できない旨も併せて規定されました(同項後段)。
ここでいう「遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」の具体例としては、ごく僅かな預金と高額の不動産が遺産として存在し、高額の不動産を代償金支弁の資力なき共同相続人の一人が一部分割を受ける場合などが想定されております。
このような場合は、将来的に、他の相続人は不動産の代わりにお金で分割を求める「代償分割」や売却して現金で分け合う「換価分割」を望む可能性もあるのでありますので、一部分割が先行した結果、全体の遺産分割の公平性が保てなくなる可能性があることから。
分割が制限されることとなります。
 

遺産の分割前における預貯金債権の行使

遺産分割前に預貯金債権を行使できるか?

これまでは、平成28年12月19日最高裁大法廷決定(民集70巻8号2121頁)により、①相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、②共同相続人による単独での払戻しができないこととなっておりました。
もっとも、この最高裁決定により、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要がある場合にも、遺産分割が終了するまでの間は、被相続人の預金の払戻しができないという不都合が生じることとなりました。
 

そこで、民法改正を実施し、遺産分割における公平性を図りつつ、相続人の資金需要に対応できるよう、2つの仮払い制度を設けることになりました。

  • ア 預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和
  • イ 預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払を受けられるようにする

 

保全処分の要件緩和(上記ア)

仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められることとなりました(家事事件手続法第202条第3項)。
事案ごとに個別の要件を検討する必要がありますので、こちらの手続をご希望の方は個別にご相談頂ければと思います。
 

家庭裁判所の判断を経ずに払戻しが得られる制度の創設(上記イ)

相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに上限150万円の制限あり。)については、単独でその権利を行使することができることとなりました。
この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなすものとされています(909条の2)。
 

(相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))× 1/3 ×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)=単独で払戻しをすることができる額
(例)相続人が配偶者と子の場合(子の法定相続分は1/2)
預金600万円 → 子100万円払戻し可

 
※同一の金融機関に複数の口座がある場合には、合算して、法務省令で定める額が限度となります(この結果、同一の金融機関に複数の口座があっても上限額の限度でしか払い戻しできませんが、、複数の金融機関に口座がある場合は、その分だけ、上限額は金融機関ごとに見ることから結果的に払い戻しを受けられる総額は増えることになります。)。
結果、口座を複数に分けておく方が、本制度に基づく仮払いの関係では有利ということになります。
ちなみに、預金引き出しの用途は問われませんので、葬儀費用や病院代の支払に使途は限られません。
 

当事務所の弁護士費用(税込)

旧日本弁護士連合会の基準によると、例えば、不動産が遺産に含まれる場合、対象となる相続分の時価相当額は、相当高額になり、ご依頼し辛い場合がございます。
そのため、当事務所では、旧報酬基準を若干変更し、よりご依頼をしやすい費用形態としております。
具体的には、当事務所の一部分割を含む遺産分割問題の報酬基準はこちらのとおりです。
 

遺産分割を弁護士に依頼するメリット

誤りなく法的手続を迅速・確実に進めることができる

遺産分割においては、何が遺産に含まれるか、隠されている遺産はないか、遺産はどのように評価すべきか(固定資産税、路線価、実勢価格等)、生前お金をもらっていた(あげていた)場合の調整等、考慮しなければならない要素が非常に多く、法的に正確な知識を要します。
そのため、なかなか個人ですべての問題点に適切・迅速に手続を進めることは困難な場合が多いと思われます。
一部分割がそもそも可能かどうかの判断や、急を要する費用の工面を遺産から行う方法も検討しつつ、手続が遅延しないよう配慮しながら、迅速・確実に手続を進めることができます。
 

直接やりとりをすることがなくなるので、交渉や手続等の精神的な負担を大幅に軽減できる

弁護士に依頼をした以降は交渉の窓口は弁護士になります。
そのため、直接揉めている相手方とやりとりをすることがなくなるため、ストレスを大幅に軽減することができます。
また、こちらの主張を受け入れてもらうためには、その伝え方や主張の順番等を考慮しながら手続を進めることが重要です。
どのように交渉を進めるとより適切な解決に導けるか、弁護士は常に考えながら手続を進めます。
ご自身で法的な知識の側面以外に、そのような点も配慮しながら手続を進めることは負担が大きく、それを弁護士に肩代わりさせられる点は大きなメリットといえます。
また、遺産の一部分割をご自身で相手方に対して打診することは、反発を招くケースもあり、なかなか困難かと思われます。
この点でも、ストレスなく打診をすることが出来る点はメリットといえます。
 

遺産分割(一部分割)について、説明を受けつつ、納得しながら進めることができる

遺産分割の問題は、様々の法律分野の中でも、かなり複雑な計算や論点を含みます。
金額も高額になる場合が多く、特に慎重に問題点を一つ一つクリアしていく必要があります。
弁護士に依頼した場合は、ご依頼者の方と二人三脚で手続を進めることになるため、しっかりと今何が起きており、何が問題(争点)になっていて、弁護士はどのように考えるか、をお伝えしながら進めていきます。
そのうえで、ご意見を聞きながら、弁護士の専門的知見・経験をも踏まえたご納得のいく解決を一緒に考えながら進めてまいります。
 

法的な知識を知っているか否かで取得金額が変わる場合があるため、適切な解決金額にて相続問題を解決できる

遺産分割の問題は、知識を知っているか知らないかで取得額が変わる見落としがちな問題を多く含んでおります。
一例ですが、遺産として見落としがちな財産を漏らさず分割すること、遺産の評価額を相手方の言い分・言い値ではなく法的に正しい額に定めることや生前被相続人からお金をもらっていた(あるいはあげていた)場合の調整を行うこと等があげられます。
このような点を自己判断しながら手続を進めた結果、本来は得られたはずの利益を失うことになってしまったというケースも、これまで複数件見て参りました。
後で後悔をしないためにも、相続問題の解決に必要な法的知識を総動員し、適切・妥当な解決を目指すことは非常に有意義といえます。
 

交渉以外の調停、審判などの手続についてもそのまま任せることができる

遺産分割の問題を取り扱う専門家としては、行政書士、司法書士、税理士、ときには、相続診断士といった方々がおります。
それぞれ、プロフェッショナルな領域をもっていると思いますが、調停、審判、訴訟といった裁判所の手続を利用することができるのは弁護士のみです。
また、紛争性のある交渉を担当することができるのも弁護士のみです。
弁護士は、交渉がまとまらない場合でも、手続きの最後まで伴走し、お力添えすることが可能です。
 

税務や登記などのケアを踏まえた解決を目指すことができる

弁護士にもよりますが、当事務所の代表は税理士資格を有しており、税理士、社労士、会計士向けの各所轄の会の相続研修講師を務めております。
そのため、税理士をはじめとした他士業との連携が可能です。
弁護士に相談するだけで、希望があれば、適切な税理士や司法書士の紹介をうけ、ワンストップで問題を解決することが可能です。
逐一、相続に強い税理士や司法書士をイチから探す手間が省けることは大きなメリットといえます。
 

おわりに

遺産分割の問題について対応経験がある一般の方は少数です。
遺産分割協議が未了でも預貯金が引き出せることになっている方も少なくないのではないでしょうか。
他方、適切な手続を取らずに預貯金を引き出した場合は、別のトラブルに発展するケースもございます。
遺産分割に関して、何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
 

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この記事の著者

弁護士法人葛飾総合法律事務所

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。
その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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