「同居していたら相続は有利になるのか?寄与分と併せて解説。」
その他「私は長年親と同居して暮らしていました。親の相続では私は有利になりますか。」
お客様からこのような質問をお受けする場合があります。
このコラムでは、親と同居していた場合に相続で有利になるのかどうかを、寄与分と併せて解説します。
※小規模宅地の特例など、税務に関する解説は除いています。
目次
1 同居していただけでは相続は有利にならない
結論から申し上げると、親と同居していただけでは相続が有利になることはありません。
なぜなら、遺言書がある場合を除き、遺産分割は法定相続分に基づいて行うからです。
民法900条は、法定相続分について、以下のように定めています。
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
このように、民法では同居の有無によって相続分を区別しておりません。
2 被相続人の同居人がより多くの遺産を相続する方法
⑴ 寄与分について
被相続人の同居人がより多くの遺産を相続する方法として、寄与分があります。
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える後見)をした人が、その度合いに応じて通常の相続分よりも多く遺産を取得できる制度です。
⑵ 寄与分が認められる要件
寄与分が認められるには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
① 寄与行為が相続開始前であること
被相続人が亡くなった後の行為、例えば、遺産不動産の維持管理、遺産整理、法要の実施などは寄与分の対象にはなりません。
② 特別の寄与であること
寄与分が認められるためには、夫婦・親族間の扶助として多くの人が通常行うと期待される程度を超える特別の労務の提供や療養監護などが必要です。
例えば、被相続人と同居していた、頻繁に被相続人の家を訪ねていた、月々小遣いをあげていた、旅行につれていった、入院中他の相続人よりも頻繁に見舞いに行ったなどの孝行では、特別の寄与は認められません。
③ 対価を受けていないこと
無償又はこれに近い状態で寄与がなされていたことが必要です。
給料や報酬をもらっていた場合は当然のこと、被相続人に生活費を負担してもらったり、被相続人の家屋や土地を無償使用している場合は、寄与分に該当しないことがあります。
④ 被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること
特別の寄与によって、被相続人の財産が減少することをくい止めたり、増加させたりというような財産上の効果が具体的に現れたことが必要となります。
3 寄与分が認められるのは難しい2つの理由
寄与分は相続人間の不公平を無くすために設けられた制度ですが、現実にはそう簡単に認められるものではありません。
なぜ寄与分はなかなか認められないのか、その理由を解説します。
⑴ 要件を満たすのが難しいから
上記2で解説した要件を全て満たすのはかなり限られたケースとなります。
親の介護を行っていた特定の相続人から寄与分の主張がされることがありますが、この場合、そもそも親は介護の必要があったのか(療養監護の必要性)、介護に専念していたと言えるか、対価を受け取っていないか、などが問題となり、調停などでは争いとなります。
⑵ 要件を客観的な資料等により証明する必要があるから
寄与分を主張する相続人は、誰が見ても、もっともだと分かるような裏付け資料を提出し、特別の寄与があることを自ら立証する必要があります。
自らが行っていた寄与行為が、寄与分の要件を満たしていたとしても、それを客観的な資料で証明できなければ寄与分は認められません。
4 同居事案における寄与分の類型と主張のための要素
同居事案で寄与分を主張する場合、主に、次のような類型の寄与が想定されます。
かっこないは、寄与類型ごとの主張の要素(ポイント)となります。
具体的な主張内容は事案ごとに異なるので、弁護士と相談をしながら主張骨子を構築していくこととなります。
- 金銭等出資型
- 要素:①特別な寄与 ②無償性 ③財産の維持又は増加との因果関係
- 療養看護型
- 要素:①療養看護の必要性 ②特別な貢献 ③無償性 ④継続性 ⑤専従性 ⑥財産の維持又は増加との因果関係
- 扶養型
- 要素:①不要の必要性 ②特別な貢献 ③無償性 ④継続性 ⑤財産の維持又は増加との因果関係
- 財産管理型
- 要素:①財産管理の必要性 ②特別な貢献 ③無償性 ④継続性 ⑤財産の維持又は増加との因果関係
5 遺産分割に関する当事務所の弁護士費用
遺産分割に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
詳細はこちらまで。
6 おわりに
同居していた親が亡くなった場合、他の相続人よりも多く遺産をもらいたいと思ってしまいますが、実際には法律に基づいて遺産分割を行うことになります。
しかし、寄与分を主張することで多く遺産を取得できる可能性があることを本コラムで解説しました。
遺産分割について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
お電話でのお問い合わせ
平日9時~18時で電話対応
☎︎ 03-5875-6124