「自筆証書遺言の偽造」 |葛飾(金町・水元・新小岩)で相続、遺産分割を弁護士に相談

「自筆証書遺言の偽造」

「父/母が私の兄弟のうちの一人にすべての財産を相続させるという手書きの遺言を書いているが、偽造なのではないかと思っている。」
「家庭裁判所の検認手続ではじめて父/母が遺言書を作成していたことを知った。」
 
このコラムでは、遺言書の偽造についてご説明します。
 

1 自筆証書遺言の方式要件、自筆証書遺言の証拠力

⑴ 自筆証書遺言の方式要件

自筆証書遺言は、遺言が遺言者の真意に基づくものであることを保障するために全文を遺言者自身が手書きしなければならないという「自署」要件のほかに、この全文の自署と相まって遺言書作成が遺言者の意思に基づくものであることを担保するために、遺言者自身が「署名押印」しなければならない]こととされています(民法第968条第1項)。
このような「自署」要件、あるいは、「署名押印」要件をみたさない自筆証書遺言は、方式要件をみたさず無効とされるリスクがあります。
 

⑵ 自筆証書遺言の証拠力

このように、自筆証書遺言には「自署」要件・「署名押印」要件が課されていることから、一見して問題がなさそうに見える自筆証書遺言には、基本的に遺言者の署名・(遺言者が保管していたと思われる印鑑による)押印がなされていることになります。
そしてこの場合、民事訴訟法第228条及び最高裁判所の判例(最高裁昭和39年5月12日・民集18巻4号597頁等)のルールにより、私文書の一つである自筆証書遺言は、「真正に成立したものと推定」される、すなわち、遺言者が意思(真意)に基づいて作成したことが推定されることになります(このことを専門的には「自筆証書遺言には形式的証拠力が認められる。」といいます。)。
 

〇民法(抜粋)
(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2・3 (略)
 
〇民事訴訟法(抜粋)
(文書の成立)
第228条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2・3 (略)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 (略)
 
〇最高裁昭和39年5月12日・民集18巻4号597頁(要旨抜粋)
私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、該印影は本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定するのを相当とするから、民事訴訟法三二六条(※現行民事訴訟法228条)により、該文書が真正に成立したものと推定すべきである。

 

2 自筆証書遺言の「偽造」の主張立証方法

⑴ 前記1⑵で説明したルールからすれば、「このような遺言をするはずがない!兄弟が偽造したものだ!」という思い・直観を抱いたとしても、このルールを踏まえた適切な「偽造」の主張立証(計画)を組み立てる必要があります。
 
⑵ まず、「署名が偽造」という点について考えてみると、筆跡鑑定の結果がそれ自体決定的な証拠になるとは裁判実務上はなかなか考えられていないのが現実であることから、

  • ①遺言書が作成されたとされる当時の遺言者の判断能力・病歴・手書き能力の有無・程度(診断書、カルテ、診療録、介護録等の医療記録・介護記録など)
  • ②自筆証書遺言の発見の経緯(家庭裁判所の検認における発見者の供述内容など)
  • ③遺言書の内容と遺言者の生前の言動が合致しているか(同居状況・財産状況からしてそのような内容が不自然といえるか)

 
といった、遺言作成前、遺言作成当時、遺言内容自体を幅広く検討して、署名が偽造された(遺言者が署名できるはずがない)という事実の証明を目指すことになります。
 
⑶ 次に、「押印が勝手になされた」という点について考えてみると、

  • ①印鑑が同居の親族と共用されていた
  • ②父/母が兄弟に預けていた印鑑が勝手に使われた
  • ③同居の親族が自由に印鑑を使える状況にあった

 
などいうように、印鑑の保管状況等に応じた主張立証方法があり得ます。
例えば、「贈与証書」と題する書面の押印につき、③の事情が争点となったものとして、次の最高裁判例があります。
 

〇最高裁昭和45年9月8日・集民100号414頁(抜粋)
所論甲一号証の一(贈与証書と題する書面)のD名下の印影が同人の印章により顕出されたものであることは、当事者間に争いがないのであるが、かような場合には、反証のないかぎり、その印影が本人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定すべきで、その結果民訴法三二六条により文書全体の真正な成立が法律上の推定を受けることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和三九年五月一二日第三小法廷判決、民集一八巻四号五九七百)。
しかし、右印影顕出の真正についての推定は事実上の推定にとどまるから、原判決が引用する第一審判決が、上告人がDと同居中でDの印章を自由に使用できる状況にあつたとの事実を認定したうえ、甲一号証の一の記載内容自体についての疑点、作成の必要性の首肯しがたいこと等、D作成の文書であることが疑わしい事情を経験則上判断し、これとあいまつて前示Dの印章顕出の推定を破り、その真正を否定したことは、原審の自由心証に属するものとして許されるところであり、右認定は、当裁判所としても是認しうるところである。

 

3 当事務所の自筆証書遺言無効確認請求の弁護士費用

当事務所の自筆証書遺言無効確認請求の弁護士費用基準は次のとおりです。
 

4 おわりに

自筆証書遺言が偽造されたとして自筆証書遺言の有効無効を争う場合、「偽造」が同居の親族等によって秘密裡に行われることが多く、詳細な事情を掴むことが難しいことを踏まえると、署名押印に関する民事訴訟法・最高裁判所判例のルールをきちんと理解した上で、それに沿った適切な主張立証を行う必要があります。
そのため、弁護士等の法的専門家の適切な関与の下で自筆証書遺言の偽造につき検討する必要があるということになります。
 

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この記事の著者

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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