「公正証書遺言作成の手順。原案の作成から当日までの流れを弁護士が解説。」
遺言作成・遺言執行「公正証書遺言とはどのような遺言ですか。」
「公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか。」
このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。
このコラムでは、公正証書遺言とその作成の流れをご説明します。
1 公正証書遺言とは
遺言書は大きく分けて自筆証書遺言(民法968条)・公正証書遺言(民法969条)・秘密証書遺言(民法970条)の3種類あります。
このうち、公正証書遺言とは、公証役場で作成されるものであり、2名以上の証人の立ち合いのもと、公証人がパソコンで作成し、遺言者が、記載された内容が間違いないかを確認し、最後に署名・捺印をして完成する遺言書です。
公正証書遺言のメリットは、
- 公証人が作成に関与するため、遺言書が要件不備などで無効となる可能性が低い
- 遺言者が亡くなった後の家庭裁判所での遺言の検認が不要になる(民法1004条2項)
- 遺言書の原本が公証役場で保管されるため、紛失のおそれがない
などが挙げられます。
2 公正証書遺言の作成の流れ
公正証書遺言作成の一般的な流れは、以下の5ステップとなります。
- ⑴遺言書の原案の作成
- ⑵必要書類の準備
- ⑶公証役場に作成の予約をする
- ⑷公証人との事前協議
- ⑸公証役場にて公正証書遺言の作成
以下、順に詳しく解説していきます。
⑴ 遺言書の原案の作成
遺言公正証書は公証役場で作成されるものですが、通常、原案はご自身で作成する必要があります。
原案を作成するにあたっては、まずご自身の財産を洗い出し、その後、誰に、どの財産を渡したいかを考えます。
もし原案の作り方が分からない場合は、最初の段階から弁護士などの専門家に依頼されることをお勧めします。
⑵ 必要書類の準備
原案の作成と並行して必要書類の準備を行います。
公正証書遺言の作成にあたっては、一般的に以下の書類等が必要となります。
なお、作成する遺言の内容によって準備する種類等は異なりますので、必ず事前に公証役場に確認しましょう。
- ・遺言者の実印、印鑑登録証明書
- ・遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
※相続人以外の人に遺贈を行う場合は遺贈を受ける人の住民票 - ・不動産の登記簿謄本、固定資産税納税通知書又は固定資産税評価証明書
※遺言者の財産に不動産が含まれている場合 - ・証人の本人確認資料(住所・職業・氏名・生年月日の分かる資料)
⑶ 公証役場に作成予約をする
遺言公正証書を作成するためには、事前に作成日の予約を行う必要があります。
遺言書の原案と必要書類の準備ができ次第、公証役場に予約を行い、併せて原案と必要書類の提出も行います。
⑷ 公証人との事前協議
文案の提出後、公証人と原案について事前協議を行います。
この事前協議では、遺言書に記載する財産は正確なものか、財産が特定された内容になっているか、遺言執行者の指定の要否などについて確認し、原案を遺言者に意思に沿う内容に修正していきます。
また、この段階で公証役場に納めることとなる遺言作成手数料についても説明があるのが一般です。
⑸ 公証役場にて公正証書遺言の作成
作成日当日は、事前に定めた証人と公証役場に向かい、実際に公正証書遺言の作成を行います。
なお、証人は、公証役場に依頼をすることで有料で手配いただくことも可能です。
作成当日の一般的な流れは、以下のとおりです。
① 公証人の挨拶
公証人との挨拶があります。
② 遺言者・証人の本人確認
公証人から遺言者・遺言者に対し、氏名、生年月日、住所などの本人確認がされます。
③ 公証人からの遺言内容の質問
毎回必ず実施される訳ではございませんが、公証人から、誰に何を渡すのか、遺言執行者は誰か、など遺言の内容について遺言書を見ない状態で質問を受ける場合があります。
公証人は、この質問で「遺言者が遺言する能力があるのか」また「本当に自分の意思で遺言を作成しようとしているのか」などを確認しています。
ここで遺言能力がない、遺言の作成が本人の意思によるものでない、と公証人に判断されてしまうと、遺言の作成は中止となる場合があります。
なお、この場には親族は同席できませんので、事前に遺言書の内容を確認し、自分の言葉で回答ができるように準備しておくことをお勧めします。
④ 遺言書の読み合わせ
公証人が事前に遺言書の原本、正本、謄本の3通を用意しています。
そのうち正本と謄本が遺言者と証人に手渡され、原本は公証人が手元に持って読み合わせを行います。
遺言者と証人は、遺言の内容に相違がないかを手元の正本、謄本を黙読しながら確認します。
⑤ 遺言者と証人との内容確認
遺言者と証人が内容が正確なことを承認し、各自署名捺印をする。
⑥ 公証人が署名捺印
公証人が民法969条の方式に従い真正に作成された旨を付記し署名捺印する。
3 公正証書遺言作成の当事務所の弁護士費用
当事務所では、確実に将来ご希望の財産をお届けする観点から、基本的には自筆証書遺言ではなく、全件公正証書遺言での作成を前提にご依頼をお受けしております。
費用は次のとおりです。
4 公正証書遺言作成を弁護士に依頼するメリット
⑴原案の作成から作成当日までのサポート受けることができる
「公正証書遺言作成の流れ」で説明したとおり、遺言書の原案はご自身で考える必要があります。
どのような文言を遺言に入れるべきか、どのように書けばトラブルを防止できるかなど、原案の作成は慎重に行う必要があります。
法律の専門家である弁護士に依頼することで、ご自身の要望に沿った内容の原案を正確に作成することが期待できます。
原案の作成後も、必要書類の準備、公証人との事前協議など、対応すべきこと多岐に渡りますが、これらも全て弁護士に任せることができます。
また、証人を弁護士に指定することで、作成の当日に立ち会うことができます。
当日公証人から遺言の内容について質問を受ける場などに弁護士が証人として立ち会うことで、心理的に安心することができます。
⑵遺言執行者を弁護士に依頼することができる
公正証書遺言の作成に併せて、遺言執行者を弁護士に依頼することも可能です。
遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後、相続人に代わって遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人です。
遺言の内容を実現するためには、各金融機関での相続手続や法務局での登記手続など、相応の手間がかかります。
また、遺言の内容によっては、遺言執行者がいないと実現しにくい遺言もあります。
弁護士に遺言執行者を任せることによって、相続人に手間を掛けることなく、遺言の内容をスムーズに実現することができます。
5 おわりに
今回は公正証書遺言の作成の流れを弁護士に依頼するメリットとともに解説をしました。
遺言書の作成について、何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。