弁護士法人葛飾総合法律事務所

絶縁した兄弟と遺産分割をするための方法・流れ・注意点

絶縁状態

「長年連絡を取っていない兄弟がいます。もう一生涯会うつもりはなかったのですが、この度、父親が死亡したので遺産分割を行うこととなってしまいました。会いたくもないのですが、どのように遺産分割を進めればよいのでしょうか。」
 
このようなご相談をいただく場合がございます。
昨今では、兄弟姉妹の関係が希薄化してきているという言説もあり、一昔前に比べて、全く連絡を取らない兄弟姉妹というのも珍しくはなくなってきました。
全く連絡を取らない訳ではなくとも、喧嘩別れをして積極的に話したくはない、遺産分割というセンシティブな話ができるほど良好な関係ではないという方も少なくないのではないでしょうか。
 
このような場合にどのように遺産分割を進めるのか、その方法と流れ、注意点を弁護士が解説します。
 

1 絶縁とは(絶縁の法的効力と遺産分割との関係)

そもそも、絶縁とは、法律上の用語ではございません。
 
民法では、絶縁という法律関係は規定されておらず、事実上、縁を切ったといっても、戸籍上、兄弟姉妹であることには変わらず、父親や母親などが死亡した場合は、法定相続人として、遺産分割に参加する必要があります。
 

2 絶縁をした兄弟姉妹がいる場合の遺産分割の方法と注意点

絶縁をした兄弟姉妹がいたとしても、遺産分割の方法は民法に規定されたとおり実施することに何ら変わりはありません。
遺産分割の方法に関する一般的な説明は以下のコラムで詳しく説明をしておりますのでご参照ください。

「遺産分割協議・調停で必要になる書類を解説。」


 
そのため、たとえ父親や母親が絶縁(勘当)を言い渡していたとしても、それだけで直ちに相続分がなくなることにはならない点は特に注意が必要です。
 
絶縁をした上で、財産を渡したくないと考える場合は、絶縁をした対象者に遺産を渡さないよう事前に遺言書を作成しておく必要があります(作成をしたとしても、遺留分は認められてしまう場合が多いです。)。
 

3 絶縁をした兄弟姉妹がいる場合特有の問題点とその対処方法

絶縁をした兄弟姉妹がいる場合、そもそも、その兄弟姉妹の所在が不明で連絡が取れないという場合が少なくありません。
また、所在は分かったとしても、顔を合わせれば喧嘩になることが必至で、現実的にコンタクトを取ることが難しい場合も多いでしょう。
 
このような事態に対処する方法としては、一番手っ取り早いのは弁護士に遺産分割協議を委任し、所在調査及び交渉をまとめて委任してしまうことです。
 
弁護士は、職務上請求にて、相続人の現在の所在地を把握することも可能であり、全面的に弁護士が交渉の窓口となるため、依頼をされた方が直接絶縁をした相続人とやりとりをする必要がありません。
 
また、万が一、所在調査をしたとしても、現在どこにいるのか不明、あるいは生死すら不明という場合も、不在者財産管理人選任申立て、失踪宣告申立てや遺産分割調停を公示送達の方法で実施する等対応方法はあり、これらの対応も弁護士に任せることができます。
 
絶縁の度合いにもよりますが、一般的には、関係が断絶している兄弟の遺産分割は所在が判明したとしても揉めがちであり、一筋縄ではいかないケースが多いため、早めに弁護士に相談することは有用と思われます。
 

4 絶縁した兄弟姉妹との遺産分割の具体的な流れ

仮に弁護士に委任をした上で、絶縁した兄弟姉妹との遺産分割を進める場合は、次のような流れで進行するケースが多いです(ケースバイケースですので、個々の事案ごとに相違点はもちろんございますので、その点はご留意ください。)。
 

⑴ 法律相談⇒委任契約の締結

まずは弁護士と対面での法律相談を実施し、その上で、個別に委任契約を締結し、着手金をお支払いいただきます。
 

⑵ 受任通知の発送

着手金の着金確認後、相手方の所在が判明しているケースでは受任通知を発送します。
受任通知には、弁護士が代理人として就任した旨や今後の連絡窓口を弁護士事務所にしていただきたい旨などを記載します。
 
所在が不明な場合は、戸籍を収集しつつ、戸籍の附票という書類を取得し、絶縁した兄弟姉妹の現住所を特定します。
 

⑶ 協議(交渉)

交渉内容はそれこそケースバイケースですが、遺産の範囲すら不明なケースでは、遺産を相手方に尋ねることもございますし、当方で遺産の範囲を把握しているようなケースでは、遺産分割協議書案を示し、合意を求める場合もございます。
 
交渉の対応方法や温度感等は依頼者の方と相談しながら決定していきます。
 

⑷ 話合いでまとまった場合→遺産分割協議書の締結

話合いでまとまった場合は、遺産分割協議書を作成し、全員で署名押印し、終了となります。
必要に応じて、その後、相続税申告や相続登記を実施することになるのが一般的です(他士業のご紹介も承っております。)。
 

⑸ 話合いでまとまらない場合→遺産分割調停の申立て

話し合ってもまとまらないケースは、絶縁している兄弟姉妹がいるケースの場合少なくありません。
そもそも連絡をしても無視されるケースもままあります。
 
このような場合にいつまでも協議を続けていてもらちが明かないため、その場合は、管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることとなります。
調停の詳細は、以下のコラムをご参照ください。

「遺産分割協議・調停で必要になる書類を解説。」


 

⑹ 遺産分割調停後の手続

遺産分割調停でもまとまらない場合は、審判に移行します。
調停を担当していた裁判官が一刀両断に判断することとなります。
調停でまとまった場合は、調停調書という取り決めた内容を記載した書面を作成し、終了となります。
 

5 絶縁した兄弟との遺産分割における弁護士費用

当事務所では、特に兄弟間の関係性が悪化していることを理由に弁護士費用を増額することはしておりません。
そのため、一般的な遺産分割協議、調停等の費用でご依頼を承っております。
以下の弁護士費用に関するページもご参照ください。

費用について


 

6 おわりに

絶縁した兄弟姉妹がいる遺産分割は、胃が痛くなることも多い負荷の大きな手続です。
弁護士を介入させるメリットは、経済的利益を最大化する観点ももちろん大切な観点ですが、精神的な負担を肩代わりさせる機能も大きな機能と考えております。
 
もしそのような問題に直面しましたら、1人でお悩みにならずに、まずはお気軽にお問合せください。
 

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この記事の著者

弁護士法人葛飾総合法律事務所

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。
その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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