どこに遺産があるのか分からない。遺産を隠されたかもしれない~遺産調査について
相続事件を取り扱っていると、次のようなご相談を多くいただきます。
遺産の調査は、遺産分割の前提になりますし、感情の対立が激しい事案では、素直に財産を開示していただけない場合も多くあります。
遺産をこれから調査してみたいとお考えの方は、参考にしてみてください。
調査対象
まずは、調査対象を決めなければ、調査はできません。
何はともあれ調べるべき財産としては、遺産です。
ここでいう遺産とは、死亡時に存在し、現在も存在する、プラスの財産をいいます。
遺産分割自体は、遺産が特定できれば実施可能ですが、憂いを残さぬよう、親の借金も含めて精算したい方も多いと思います。
そのため、調査対象としては「負債」も含まれることになります。
併せて、死亡前や死亡後に、相続人のひとりがお金を引き出していた場合、そちらも一つの手続内で解決したいと考える方が多数派かと思われます。
そのため、点としての残高証明ではなく、通帳や取引履歴といった取引の「線」の調査も行います。
遺産の調査
まず、大前提として、よく家を探してみる、遺産を保管していると思われる相手方に直接聞く、というのが鉄則です。
また、既に税理士による相続税申告を依頼している場合は、依頼をした税理士から税務申告資料を取り付けるということも非常に有用です。
もっとも、そのような方法を行っていただき遺産の全容が分かった場合は、弁護士に遺産調査を依頼することは検討しないと思われますので、以下では、どうしても遺産が見つからずに弁護士に調査を依頼する方に向けた調査方法を説明いたします。
不動産調査
不動産は、不動産所在地が既に分かっているようであれば、対象の不動産の登記簿謄本を取得します。
登記簿謄本取得の前に、簡易な登記情報という書面を取得することもあります。
取得に際しては、「住居表示」という情報が必要になる場合があり、住所から住居表示を割り出すためには、法務局に問い合わせをしたり、ブルーマップという資料で調べることになります。
登記簿謄本や登記情報の申請自体は、郵送でも可能ですが、現在は、登記簿謄本は登記ねっと、登記情報は登記情報サービスといったオンラインサービスにて申請が可能になっています。
不動産所在地が分からない場合は、まずは、名寄せ帳という書類を被相続人の住所地の自治体から取得します。
名寄せ帳は、被相続人がその自治体内に所有している不動産をまとめて全部記載された資料です。
名寄せ帳は、被相続人が所有している不動産を管轄する自治体ごとに請求する必要があります。
被相続人が不動産を所有していそうな地域にあたりをつけて取得していくことになります。
それでも、不動産の所在が判明しない場合は、さらに進んだ調査を実施する必要がございますので、個別の事件ごとにご依頼者に調査方法などを案内させていただいております。
預貯金調査
預貯金は、金融機関名さえわかれば、相続人としての地位に基づき、残高証明や取引履歴を取得することができます。
金融機関名すら分からない場合は、被相続人がお住まいの地域に所在する金融機関やゆうちょ、三井住友、UFJ、みずほといったメガバンクを対象に、ひとまず相続人としての地位に基づく照会作業をすることになります。
どこか一つ金融機関がヒットしたら、残高証明ではなく、取引履歴を取得することがポイントです。
取引履歴を見ると、被相続人本人が本人名義の別口座に送金をしている場合があります。
そこから芋づる式に預貯金が見つかるケースもままあります。
なお、残念ながら、金融機関に関しては横断検索することは、少なくとも、今日においてはできません。
その他金融商品の調査
その他金融商品のうち、株式や投資信託については、まず考えられるのは、証券保管振替機構(通称、ほふり)調査です。
ほふり調査は、あらゆる株式・投資信託を調査できるというものではありませんが、ほふりで取り扱いのある一定の株式・投資信託については横断検索できる点が非常に大きいです。
ほふりで取り扱いのない非上場株式や投資信託は、個別の金融機関に相続人の地位に基づく照会を行う必要があります。
調査の起点としては、預貯金の取引履歴を辿っていくと、預貯金以外の金融機関にたどり着くこともあるため、一つ一つ丁寧に調査していくことが肝心です。
その他、金やプラチナ等を持っている方も少なくありません。
取り扱い機関に照会をしてみることは有用と思われます。
負債の調査
負債調査は、一番簡単な方法は、放置しておくと債権者から督促の手紙がくるので、そちらで特定する方法です。
住宅ローンについては、登記簿謄本の乙区の箇所を見ると、抵当権が設定されている場合が殆どであり、そこから債権者を特定できます。
債権者が特定できれば、あとは照会をかけることで負債を把握することができます。
あとは、例によって、預貯金通帳の取引履歴を丁寧に調査することで借り入れが判明するケースもあります。
一点、注意が必要なこととしては、将来的に相続放棄をする可能性がある方は、負債の承認をしたり弁済をしてはいけません。
承認や弁済をすると、相続放棄が認められない場合がありますので、注意が必要です。
各種調査を弁護士に依頼するメリット
ここまでも何度も出てきたところですが、取引履歴の調査を始めとした調査は、遺産分割の出発点であり、極めて重要です。
特に要となる取引履歴は、金融機関によりますが、10年程度出していただけるケースが多いです。
取引履歴は、被相続人の歴史ですので、調査を行うに当たっては、①遺産を探す視点、②負債を探す視点、③不正出金を探す視点等、これから予想される紛争を見据えたさまざまな視点を持って精査していく必要があります。
このあたりの調査・確認に関しては、相続に精通した弁護士が得意とする領域でもあり、弁護士に遺産調査を依頼する大きなメリットの一つといえます。
また、弁護士に調査を依頼するメリットとしては、調査の過程で先方に連絡する精神的な苦痛を肩代わりさせることが出来る点や、手間を大幅に省ける点、調査後の遺産分割交渉や調停・審判まで引き続き依頼できる点が挙げられます。
遺産分割を弁護士に依頼する流れ
まずは、お電話にてお気軽にお問合せください。
当事務所では実際に弁護士が電話に出て、概要をお伺いしております。
お電話で概要をお伺いした後に、日程の調整を電話にて承ります。
ご来所いただき、正式なご相談に至った際は、お電話で伺った概要を前提に、
- 手続の流れ
- 所要時間
- 弁護方針
- 弁護士費用の見積もり
を絵を書きながらご説明させていただきます。
相談料は初回30分については無料となります(30分以降は30分ごとに5000円を頂戴します。)。
相談の結果、ご依頼をお決めになった場合は、委任契約書を取り交わします。
委任契約書に基づく着手金のお支払いを確認いたしましたら、活動を開始いたします。
なお、当事務所では、双方納得をして手続を進めるために、ご依頼後に弁護方針や手続の流れを改めてメールでも個別にお送りしております。
遺産分割事件ご依頼後の流れ
ご依頼後は、遺産の範囲の調査のみご依頼を頂いた場合は次のページをご参照ください。
●相続調査パック
通常の遺産分割事件の場合は、交渉段階では、先方に受任通知(弁護士が就任したことをお知らせする書面)をお送りすることが多いです。
そのうえで、相続人、遺産の範囲、遺産の評価、特別受益や寄与分、遺産の分け方等をご依頼者とご相談のうえ、資料を精査しながら確定していきます。
そのうえで、当方の見解を先方にお示しします(示し方はケースバイケースですが、遺産分割協議書案を当方にて作成したうえ、そちらをベースに議論を深める場合も多いです。)。
話し合いでまとまれば遺産分割協議書を取り交わして終了となりますが、まとまらない場合は、遺産分割調停を申し立てることとなります。
調停でまとまれば調停調書という書面を裁判所で作成し終了となり、調停でもまとまらない場合は、裁判所にて審判に移行することとなります。
ご依頼後の遺産分割の弁護方針はまさにオーダーメイドですので、個別の事案をお伺いしたうえで、一人一人事案に即した方針を立てさせていただいております。
遺産分割の弁護士費用
弁護士費用は法律事務所によりまちまちですが、ここでは当事務所の弁護士費用について説明します。
弁護士費用は、法律相談料、着手金、報酬金、実費等に分けられます。
上記各項目についての詳細は、こちらをご覧ください。
遺産の調査のみのご依頼の方は、以下のページに詳細な費用を記載してあります。
●相続調査パック
遺産分割に関する費用は、こちらをご覧ください。
おわりに
遺産の調査を可能な限り実施して、公平に遺産を分けたいとお考えになるのは「当然の思い」と考えております。
当事務所は、税理士・会計士向けのセミナーや書籍の執筆活動等を通じて専門性を高めつつ、実務においても困難な相続放棄事案を含め、複数の案件に取り組んでまいりました。
遺産の把握や遺産分割でお悩みの際は、お力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
お電話でのお問い合わせ
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