相続事件を取り扱っていると、次のようなご相談を多くいただきます。
「遺産を隠されてしまっており遺産の全貌が分からない。」
「自分なりに遺産は調べたものの他に遺産がある可能性があるので調べたい。」
「生命保険金は遺産に含まれるのか。受け取った相続人がおり、不公平に感じる。」
どのような財産が遺産に含まれるのかを知ることは、遺産を探したり、遺産分割を適切に実施するうえで、必要不可欠です。
遺産の探し方と何が遺産に含まれるか(遺産の範囲)を、弁護士が解説します。
1 遺産とは
遺産分割における分割対象である「遺産」とは、①亡くなった方が相続開始時に所有し、②現在(分割時)も存在する、③未分割の、④プラスの財産をいいます。
2 遺産に含まれる(含めることができる)財産の具体例
この遺産の典型例としては、土地・建物、借地権、株式、現金、投資信託、預貯金等が挙げられます。
相続開始後の賃料や利息は、「①相続開始時」に存在する財産ではないため、原則としては遺産に含まれませんが、相続人の皆さんの合意があれば、遺産に含めることが可能です。
使途不明金などの不法行為債権や不当利得債権と呼ばれる類の可分な債権は、お亡くなりになった時点で当然に分割されるのが原則(③の未分割の要件を欠くのが原則)ですが、同じく、相続人の皆さんの合意があれば、遺産に含めることが可能です。
その他、借金(③亡くなった時点で当然に分割されるので未分割とはいえず、④プラスの財産でもない)、葬儀費用(①相続開始時に存在せず、④プラスの財産でもない)、遺産管理費用(①相続開始時に存在せず、④プラスの財産でもない)については、遺産分割審判という手続では遺産として扱うことはできませんが、相続人の皆さんの同意があれば、話し合いや調停手続では遺産として取り扱うことができます。
3 生命保険金は遺産に含まれるのか
受取人が相続人に指定されている生命保険金は、お亡くなりになった方の財産と思われがちですが、実は、相続をした方の保険会社に対する請求権に過ぎません。
つまり、お亡くなりになった方の財産を分配するという構造にはなく、直接、相続人が請求権を行使するという構造であるため、上記の遺産の定義でいうところの「①亡くなった方が相続開始時に所有」していた財産とはいえず、遺産には含まれません(なお、その保険金の価格が遺産と比較して著しく高額な場合は、特別受益として考慮できる場合がございますので、そのようなケースに直面した場合もご相談ください。)。
その他にも、遺産に含まれるかどうか微妙な事案は多くあります。
特に、遺産の概念は、税務と法務で微妙に異なる場合があり、これもまた混乱を来す原因になっています。
判断に迷う場合や怪しい場合は、お気軽に弁護士までお尋ねください。
4 遺産の調査が必要な場合とは
遺産の範囲は大まかに把握できたとしても、問題は、どのようにその遺産を探し出すかです。
遺産を管理していた相続人がいれば、その人にまずは尋ねてみることが先決です。
お亡くなりになった方が一人で遺産を管理していたのであれば、家をくまなく探してみることも有効です。
もっとも、なかには遺産を隠してしまう相続人もおります。
そのような場合は、お願いをしても遺産が開示されることは期待できないため、遺産の調査を実施する必要があります。
5 具体的な遺産の調査方法とは
ここでは典型的な遺産の一部について、調査方法の一例をご紹介します。
⑴ 土地・建物
まずは、お亡くなりになった方がお住まいだった土地・建物の登記情報や登記簿謄本を取得して、所有者を確認する方法が有効です。
登記簿謄本を見てみると、抵当権が設定されており、共同担保で他の不動産が出てくる場合もあります。
お亡くなりになった方の不動産が所在する自治体まで分かれば、名寄帳という資料を自治体から取得することも有効です。
名寄帳を取得することで、その自治体に所在するお亡くなりになった方の土地・建物を一覧で確認することができます。
その他にも民間のサイトを利用することで、お亡くなりになった方の名前で検索する方法等もあり、調査をあきらめる必要はまったくございません。
⑵ 預貯金
預貯金は、金融機関に相続人であることを示す戸籍謄本を示すことで、約10年分の取引履歴や残高証明を取得することが出来ます。
取引履歴を取得すれば、その履歴を辿ることで、そのほかの預貯金や金融資産を発見することができますし、生前、お金を不正に送金させられていた事情等も把握できる場合もあります。
もっとも、金融機関はある程度当たりをつけて調査を実施いただく必要があります。
メガバングや近くの地元の金融機関を中心にこれらの調査を実施する場合が多いです。
⑶ 上場企業の株式
まず、銘柄が分かっていれば、上場企業の場合は信託銀行等が株主名簿の管理人になっている場合がありますので、株主名簿管理人に尋ねる方法があります。
また、取引をしている証券会社が分かれば、もっと端的に証券会社に照会を掛ければ良いです。
それらも分からない場合は、証券保管振替機構(通称ほふり)という機関に照会することでどこの金融機関で株式を管理しているか分かる場合があります。
金融機関さえわかれば、そこから芋づる式に投資信託なども発見することができる場合があります。
⑷ 負債
負債は、原則として、お亡くなりになった時点で当然に分割されるため、そのまま待っていると債権者から督促されて把握できる場合も多いです。
積極的に調査する場合は、サラ金に関しては、JICC(株式会社日本信用情報機構)、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、全国銀行個人信用情報センター(一般社団法人全国銀行協会)といった信用情報機関に照会をかけることで把握できる場合があります。
6 遺産の範囲の確認や調査を弁護士に依頼するメリット
何が遺産に含まれるのか、そして、遺産の具体的な調査は、弁護士が得意とする領域です。
もっとも、相続を多く取り扱う弁護士でなければ、なかなか調査し切れないケースもあると考えております。
遺産が見つかれば、単純に取り分が発見した遺産の分だけ向上する点は、最も大きなメリットです。
また、弁護士が交渉することで、例えば、不動産であれば隠したとしても意味がないことをしっかりと先方に伝え、説得することで、遺産の把握に協力いただけるようになるケースもあり、これも弁護士が関与するメリットといえます。
こういった交渉を自分で実施せずに任せることで負担を軽減し、後で後悔しない対応を取ることができる点も大きなメリットといえるかもしれません。
遺産の調査は、経験と柔軟な発想が重要であると考えております。
まずは、少しでもお悩みになられている方は、お気軽に当事務所までお問合せいただければと思います。
7 具体的なご相談の流れ
- ⑴ まずは、お電話にてお気軽にお問い合わせください。
「0358756124」(平日午前9時~午後6時)
事務職員ではなく、弁護士が直接、事案の概要をお伺いさせていただきます。 - ⑵ お電話で概要をお伺いした結果、事務所にお越しいただいて正式なご相談をしていただくことになった場合は、日程の調整をお電話でいたします。
- ⑶ 正式なご相談では、手続の流れ、所要時間、弁護方針、費用のお見積りを絵を書きながら行います。相談料は、初回30分は無料となります。
- ⑷ 相談の結果、相続のご調査等に関するご依頼をお決めになった場合は、費用やご依頼事項を明確に記載した委任契約書を取り交わします。
- ⑸ 着手金のご入金後、調査を開始したします。
8 遺産の範囲の確認や調査を含む遺産分割の弁護士費用
弁護士費用は、法律相談料、着手金、報酬金、実費等に大きく分けられます。
上記各項目についての詳細は、こちらをご覧ください。
遺産分割の費用の詳細は、こちらをご覧ください。
9 おわりに
遺産の範囲の確認や遺産の調査を含む遺産分割手続を、正確・確実に行うためには、法的な専門知識が必要となります。
相続分野でお悩みの際は、当事務所は特にお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
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