弁護士法人葛飾総合法律事務所

「相続人行方不明の場合に住所・連絡先を探す方法、見つからない場合の対応策」

相続人行方不明の場合に住所

「相続人が行方不明でどこに住んでいるのか分からない。連絡先も疎遠で分からない。」
「色々と探したものの、結局行方不明で遺産分割協議をどのように進めれば良いか分からない。」
 
こういったご相談をお受けするケースがございます。
 
遺産分割協議は、原則として、相続人全員の署名押印が必要となります。
そのため、行方不明の方がいる場合は暗礁に乗り上げてしまうように思われる方も少なくありません。
 
今回は相続人行方不明の場合に住所・連絡先を探す方法、見つからない場合の対応策を弁護士が解説します。
 

1.相続人行方不明の場合の住所の調査方法

⑴ 戸籍の附票の取得を通じた調査

まず、行方不明の方の本籍が分かる場合は、戸籍の附票という資料を取得することをお勧めします。
戸籍の附票とは、本籍地の市町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録された書類です。
ここで住所が判明するケースが最も多いです。
もし、現在の本籍地が分からない場合は、ご自身の本籍地から行方不明者の本籍地を辿ることで、行方不明者の本籍地を特定でき、そこから戸籍の附票を取得する流れとなります。
弁護士は、職務上請求という職権に基づく請求を行い、これらの資料を収集することが一般的です。
 

⑵ 住民票上の住所にいない場合

住民票上の住所は前述の方法で特定できますが、住所地に居住していない(住民票を移転していない)場合もございます。
その場合は、例えば携帯電話の番号が分かるケースは、弁護士の職権で携帯キャリアに照会を掛けられる場合があり、そこから現在地が判明する場合があります。
また、住民票は移転していないものの、住民票上の住所地から現在地に転送する設定としている方もおり、その場合は、一旦住民票上の住所地宛に通知書面をお送りしてみるのも手です。
 

2.見つからない場合の対応策

⑴ 不在者財産管理人選任申立または失踪宣告の申立を検討

ア 不在者財産管理人選任申立

従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に、家庭裁判所は、申立てにより、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、財産管理人選任等の処分を行うことができます(民法25条1項)。
これを不在者財産管理人の選任といいます。
こちらは、不在者の従来の住所地(または居住地)の家庭裁判所に利害関係人から申し立てをすることで認められる手続です。
この申立が認められると、行方不明者に代わって財産管理を担う不在者財産管理人が家庭裁判所より選任され、遺産分割協議に参加することになります。
その結果、無事に遺産分割手続を進めることができるようになります。
不在者財産管理人は、不在者の財産を維持・管理することになるため、法定相続分を割り込む遺産分割には合意しないことが一般的である点は注意が必要です。
 

イ 失踪宣告の申立

失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき(民法30条1項、普通失踪)、又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(民法30条2項、危難失踪)は、不在者の従来の住所地(または居所地)の家庭裁判所は、利害関係人からの申立てにより、失踪宣告をすることができます。
前述の不在者財産管理人選任との最大の違いは、本制度は「死亡したものとみなす」制度であるため、行方不明者は相続人ではなくなる点です。
例えば、行方不明者に配偶者や子がいない場合は、両親や兄弟が行方不明者の相続分を承継することになります。
本制度は、通常は、普通失踪の宣告を検討する場合が殆どかと思われるので、7年間の生死不明が必要である点は注意が必要です。
 

⑵ 第二の方法 ─公示送達による遺産分割審判の申し立て─

前述の不在者財産管理人選任申立てや失踪宣告の申し立ては、いずれも家庭裁判所を通じた手続であることから時間と労力を要します。
これらの手続を経ずに、遺産分割を強行する方法としては、遺産分割「審判」を、本人がその場に存在しなくても実施可能な公示送達という方法で実施する方法があります。
なお、遺産分割「調停」では、公示送達は使うことができないため、「審判」に限られます。
審判は、任意の話し合いでの解決を目指す手続ではなく、裁判所に判断を仰ぐ手続です。
公示送達で審判を開くかどうかは裁判所の判断次第となるため、必ずしもこの方法で遺産分割が解決できる訳ではない点は注意が必要です。
事案によっては、むしろ、きっちりと失踪宣告を行い、行方不明者が相続人ではないことを確定したほうが、メリットが大きい場合もあるため、どの方法で進めるべきかは弁護士と相談したうえで判断したほうが安全です。
 

3.相続人調査と遺産分割を弁護士に依頼するメリット

相続人調査は、事案によっては大量の戸籍を収集する必要がある場合があり、それ自体労力がかかる場合があります。
また、仮に行方不明が確定した際に、いずれの方法を選択するかによって、最終的な取得額が変わってくる場合もあります。
そのため、これらの判断は考慮すべき要素も数多く含まれますので、誤った判断を下してしまう可能性もございます。
ご依頼者様にとって、最も適切な遺産分割を実現するためにも、迷った際は弁護士にご相談いただければと思います。
 

4.当事務所の弁護士費用

当事務所の遺産分割についての詳細は、こちらをご覧ください。
 

5.おわりに

行方不明者がいる遺産分割は、一般の遺産分割に比べて難易度が上がることは間違いありません。
もっとも、本コラムにて解説したとおり、適切な選択を行うことで、手続は着実に進行させることは出来ますし、選択内容によっては、寧ろ大きな利益を得ることができる場合もございます。
まずは、お気軽に弁護士までご相談いただければと思います。
 

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この記事の著者

弁護士法人葛飾総合法律事務所

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。
その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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