弁護士法人葛飾総合法律事務所

遺族年金は遺産分割の対象?相続放棄の影響は!?

「相続放棄をすることにしたのですが、遺族年金はもらえなくなってしまうのでしょうか」
「遺産分割をするときに遺族年金はどのように考慮したら良いのでしょうか。」
といったご相談をお受けするケースがよくあります。

ご家族、特に一家の支柱であった方を亡くされたご遺族にとって、その後の生活設計は切実な問題です。
公的年金制度である遺族年金は、残されたご家族の生活を支える重要な役割を果たします。しかし、もし亡くなった方(被相続人)に多額の借金があった場合、ご遺族は「相続放棄」を検討されるかもしれません。その際に、「相続放棄をしたら、遺族年金も受け取れなくなってしまうのだろうか?」というご不安を抱くのは当然のことです。
このコラムでは、遺族年金が遺産分割の対象になるのか、そして相続放棄をした場合に遺族年金を受け取れるのか、という疑問について、法律の専門家である弁護士が分かりやすく解説します。
 


 

1. 結論:遺族年金は遺産分割の対象外!相続放棄しても受け取れます

結論から申し上げますと、遺族年金は、遺産分割の対象にはなりません。
そして、相続放棄をしても問題なく受け取ることができます。
なぜなら、遺族年金は亡くなった方の死亡時に保有する財産(相続財産)ではなく、法律に基づき、死亡後、ご遺族自身の権利として直接支給される「固有の権利」だからです。遺族年金は、そもそも相続財産ではないため、相続放棄の影響を受けないのです。

2. なぜ遺族年金は「相続財産」ではないのか?

遺族年金が相続財産に含まれない理由は、その法的性質にあります。
国民年金法や厚生年金保険法では、遺族年金を受け取ることができる遺族の範囲や順位が明確に定められています。これは、相続法とは全く別の観点から、残された遺族の生活を保障するために設けられた制度です。
裁判所の判断も一貫しています。例えば、過去の審判例(大阪家裁昭和59年4月11日審判)でも、遺族年金は「固有の権利にもとづくもので、被相続人の遺産と解することはできない」と判断されています。

3. 遺族年金の種類

遺族年金には、主に以下の2種類があります。どちらも考え方は同じです。
遺族基礎年金:国民年金に加入していた自営業者や専業主婦(夫)などが亡くなった場合に、主に「18歳未満の子のいる配偶者」または「子」に支給されます。
遺族厚生年金:厚生年金に加入していた会社員や公務員などが亡くなった場合に、配偶者、子、父母など、法律で定められた優先順位の高い遺族に支給されます。
このように、法律が「誰が受け取るか」を直接定めているため、相続人同士で話し合って分け方を変えたり(遺産分割)、相続放棄によって権利がなくなったりすることはないのです。

4. 「未支給年金」も相続財産ではありません(相続放棄の影響を受けません)

遺族年金と似たものに「未支給年金」があります。年金は、支給月の前月と前々月の2ヶ月分が後払いで支払われる仕組みです。そのため、年金受給者の方が亡くなった際、本来その方が受け取るはずだったのに、まだ支払われていなかった年金が発生することがあります。これが「未支給年金」です。
これも遺族年金と同様に、相続財産には含まれず、相続放棄をしても受け取ることが可能です。
この未支給年金についても、法律で受け取れる遺族の範囲と順位が定められています(亡くなった方と生計を同じくしていた配偶者、子、父母など)。請求する際は、ご遺族が「自己の名で」請求することになります。最高裁判所も、「相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたもの」であり、相続の対象にはならないと判断しています(最高裁平成7年11月7日判決・民集49巻9号1829頁)。したがって、未支給年金も遺産分割の対象外であり、相続放棄をしても受け取ることができるのです。

5.遺族年金の問題を含む遺産分割や相続放棄の弁護士費用

当事務所の遺産分割や相続放棄の弁護士費用は、以下のページをご覧ください。
【遺産分割】
https://souzoku-katsushika.com/cost/#i-3
【相続放棄】
https://souzoku-katsushika.com/cost/#i-12
※特に遺族年金の問題を含むとしても追加料金をいただくことはございません。

6.まとめ

今回のポイントを整理しましょう。

  • ・遺族年金は、法律で受給権者が定められた遺族固有の権利です。
  • ・そのため、亡くなった方の相続財産には含まれず、遺産分割の対象外です。
  • ・したがって、相続放棄をしても、遺族年金の受給権を失うことはありません。
  • ・亡くなった方が受け取るはずだった未支給年金も同様に、相続財産ではなく、相続放棄の影響を受けません。

亡くなった方に借金があり、相続放棄を検討されている状況でも、ご自身の生活の支えとなる遺族年金や未支給年金の受給を諦める必要はありませんのでご安心ください。
相続手続は、遺族年金の他にも様々な手続が必要となり、複雑で分かりにくい点も多いかと存じます。遺産の分け方で揉めてしまったり、相続放棄の期限が迫っていたりと、少しでもご不安な点がございましたら、お早めにご相談ください。
専門家として、皆様の状況に合わせた解決策をご提案いたします。

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この記事の著者

弁護士法人葛飾総合法律事務所

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。
その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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