「兄弟姉妹間の相続放棄」

兄弟相続

「疎遠だった兄が亡くなったと連絡があり、兄には借金があることが分かった。」
「妹が亡くなったが取り立てて引き継ぎたいような財産がない。」
 
このコラムでは、兄弟姉妹間の相続についてご説明します。
 

1 亡くなった兄弟姉妹(被相続人)の兄弟姉妹が相続人になる場合

以下の記事でも説明したとおり、兄弟姉妹が亡くなり、①その兄弟姉妹が生涯独身で子どももおらず、②父母、祖父母などの直系尊属も既に亡くなっている場合、残された兄弟姉妹が相続人になることがあります。
→「遺産相続で兄弟が相続人になれるケースは?相続割合やトラブル事例を解説。」をご覧ください。
 

2 相続放棄を検討すべき場合

前記1のようなケースで亡兄弟姉妹の兄弟姉妹が相続人になる場合、プラスの財産(不動産、預貯金など)もマイナスの財産(借金など)も引き継ぐことになります。
そのため、亡兄弟姉妹に見るべき財産がなく、他方で生前に借金をして生活をしていたといった事情がある場合(マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合)には、「相続放棄」を検討することになります。
相続放棄が認められると、「初めから相続人とならなかったものとみな」される結果(民法第939条)、マイナスの財産も、プラスの財産も引き継がない(引き継がなくてよくなる=亡兄弟姉妹の借金返済から免れる)ことになります。
 

3 相続放棄の手続

⑴ア 相続放棄は、ほかの相続人との間で相続放棄を宣言する、宣言する書面を作成するだけではダメで、管轄の家庭裁判所(=被相続人である亡兄弟姉妹の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に、添付書類とともに「相続放棄申述書」を提出し、相続放棄の申立てをする必要があります。
 
イ 相続放棄申述書ひな形は例えば東京家庭裁判所のホームページなどに掲載されており、申述人の本籍・住所・氏名、被相続人との関係、被相続人の本籍・最後の住所・氏名などを記載することになります。
 
ウ 亡兄弟姉妹の兄弟姉妹が相続放棄の申立てをする場合の添付書類としては、身分関係(相続関係)により追加で必要になる場合もありますが、一般に、
 

  • ① 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • ② 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • ③ 被相続人の住民票除票又は戸籍の附票
  • ④ 申述人の戸籍謄本

 
が必要になります。
 
エ 申立手数料800円のほか、裁判所が定める予納郵便切手を納めることになります。
⑵ 相続放棄申述書を弁護士に依頼するのではなく、申述人ご本人で家庭裁判所に提出した場合、相続開始日、相続放棄の理由、遺産の有無などの「相続放棄照会書」が家庭裁判所から届くので、これに記入し返送することになります。
 
⑶ その後、問題がなければ、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されてきます。
これにより、相続放棄の手続自体は完了になります。
なお、借金の返済を求めてくる第三者などに相続放棄をしたことを証明する場合には、家庭裁判所に「相続放棄申述受理証明書」の発行を申請します。
この証明書をその第三者に提示すれば、一般には返済請求は止まることになります。
 

4 相続放棄の留意点

⑴ 期間制限の遵守
相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内にしなければならず(民法第915条)、遺産調査に時間を要するなどこの期間制限を遵守することが難しい場合には、期間延長の申立てを別途する必要があります。
 
⑵ 相続財産の消費等の禁止
相続放棄は、「初めから相続人とならなかったものとみな」される結果(民法第939条)、マイナスの財産も、プラスの財産も引き継がないという制度になります。
ですので、このような制度趣旨と矛盾するような行動、例えば相続財産を隠したり、処分したり、消費したりしてしまうと相続放棄の効力が争われてしまうリスクがあります(民法第921条)。
 
⑶ 兄弟姉妹の子が代襲相続をするか
ちなみに、兄弟姉妹が相続放棄をした場合、その子供が相続人になるのか、という問題がございます。
民法887条2項、民法889条2項により兄弟姉妹の子が相続人になる場合は、その兄弟姉妹が死亡したとき、相続欠格事由に該当したときは、相続人にはなるとされております。
もっとも相続放棄の場合は、その兄弟姉妹自体が相続人ではなくなるため、その兄弟姉妹を代襲して相続人になることはなく、その子が承継することはありません。
 

5 相続放棄に関する当事務所の弁護士費用

相続放棄に関する当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/inheritance/#souzokucost
 

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この記事の著者

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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