相続登記の義務化(2024年4月開始)とは? 期間制限・罰則(過料)や「相続人申告登記」を弁護士が解説
相続手続
目次
1 相続登記の申請の義務化とは
⑴ なぜ義務化されたのか? ~所有者不明土地問題
昨今新聞などでも取り上げられることがある「所有者不明土地問題」とは、不動産登記簿により所有者が判明しない、または、判明しても連絡がつかない土地をいいます。
国土交通省の調査結果によれば、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しなかった土地の割合は約20パーセントであり、民間の所有者不明土地問題研究会最終報告によれば、平成28年時点における全国の所有者不明土地の面積は、九州本島の土地面積(約367万ha)を超える約410万haにのぼり、このまま所有者不明土地問題の解決が図られない場合、2040年には約720万haにのぼるであろうとされています。
このまま所有者不明土地問題を放置すれば、土地の有効な利活用が困難になることは明らかといえます。
⑵ 義務化の背景と内容
このような所有者不明土地問題の発生拡大の主な原因は、
- ● 土地の所有者亡き後に相続登記がなされないこと(相続登記未了)
- ● 所有者の住所変更登記がなされないこと
などにあると考えられています。
この対策として不動産登記法の改正により、「相続登記の申請の義務化」が図られることになりました。
具体的には、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、この相続により所有権を取得した人は、
「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」
に所有権の移転の登記を申請しなければならないなどの義務が設けられました(改正不動産登記法76条の2第1項、同条第2項)。
※なお、関連する制度として、住所・氏名変更登記の義務化が令和8年4月1日開始予定です(変更日から2年以内の申請義務、違反は5万円以下の過料)。将来的なトラブル防止のため、住所変更も忘れずに行う必要があります。
2 【重要】相続登記の義務化はいつから? 過去の相続も対象?
相続登記の申請の義務化は令和6年4月1日から既に施行されています。
ここで最も注意すべき点は、義務化の対象となる相続等が令和6年4月1日以前に発生したものも含まれる(お亡くなりになったのが令和6年4月1日以前であっても申請義務は負うことになる=さかのぼって改正不動産登記法が適用される)ということです。
つまり、何十年も前に亡くなった親や祖父母名義のまま放置している不動産も、さかのぼって義務化の対象となります。
ただし、このさかのぼっての適用には、猶予期間(改正不動産登記法附則第5条第6項等)が設けられています。この猶予期間がいつまでかはケースごとに判断する必要がありますので、迷われた場合には一度弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
3 相続登記の申請の義務を怠るとどうなる?(10万円以下の過料)
相続登記申請をすべき義務があり、かつ、「正当な理由」がないにもかかわらず、この申請をしない場合、「10万円以下の過料」に処することとされています(改正不動産登記法第164条第1項)。
ここでいう「正当な理由」とは、例えば、以下のようなケースが想定されます。
- 相続人が多すぎて戸籍収集に多くの時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲が裁判などで争われている場合
単に「忙しかった」「知らなかった」といった理由が正当な理由として認められるかは難しいところです。
4 相続登記の申請の義務を果たすにはどのようにすればよいのか
3年以内の「相続登記の申請」の義務を果たす方法は、大きく分けて2つあります。
⑴ 原則的な方法=相続登記
一つは、従来通りの「相続登記」(名義変更)を行う方法です。 遺産分割協議がまとまっていればその内容で、もしまとまらなくても、(他の相続人の協力を得なくても一人でできる)法定相続分での相続登記の申請すれば、義務を果たしたことになります。
ただし、このような法定相続分での相続登記は、被相続人の出生から死亡までの戸籍等を取得する必要があり、非常に大変です。
⑵ 新設された簡易な方法=相続人申告登記
このような負担を軽くするため、今回の不動産登記法の改正では、負担ができる限り軽くなるよう、「相続人申告登記」という手続が新たに設けられました。
この手続は、従来の相続登記の申請に代わり、自らが所有権の登記名義人であることを申し出ることにより、この義務を果たしたこととなるという制度です。
5 相続人申告登記のメリットと注意点
「相続人申告登記」は、相続人の一人から単独で申出ができ、必要な書類も少ないため、とりあえず義務違反(過料)を回避する上では有効な手段です。
ただし、この手続きには重大な注意点があります。 あくまでも「私が相続人の一人です」と公示するだけで、相続による権利の移転(例:Aさんの持分が1/2)を公示するものではありません。
そのため、相続人申告登記をしただけでは、その不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりすることはできません。
根本的な問題を解決するためには、最終的に遺産分割協議を行い、正式な相続登記(名義変更)が必要になることには留意が必要です。
6 当事務所の弁護士費用・サポート内容
当事務所では、相続登記の義務化に関するご相談や、その前提となる遺産分割協議、遺言書作成などを幅広くサポートしております。
- 「遺産分割協議がまとまらない」
- 「他の相続人と連絡が取れない、行方が分からない」
- 「相続人申告登記でよいか、正式な登記をすべきか迷っている」
このようなお悩みをお持ちの場合、まずは弁護士にご相談ください。
なお、当事務所の弁護士費用は、以下のリンクからご確認いただけます。
https://kl-o.jp/inheritance/#souzokucost
7 おわりに:義務化を「相続整理のチャンス」として活かすために
法定相続分で登記をしたり、相続人申告登記をしたとしても、本改正の登記義務を一応みたすのみで、抜本的な問題の解決にならない場合があり、ゆくゆくは正式な遺産分割協議を行う必要があります。そのため、相続登記の義務化を「相続問題をきちんと整理する良い機会」と捉え、相続登記の義務に関する問題の解消と並行して遺産分割協議の実施も検討することをお勧めします。
現在、生前の相続対策をお考えの場合は、遺言書を作成することで、将来的に相続人が相続登記義務で悩まないようケアすることも有効です。
登記申請手続自体は当事務所では扱いはありませんが、提携している相続登記を多く扱う司法書士もおりますので、遺産分割協議から登記完了までワンストップでの対応が可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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