「相続登記の申請の義務化・相続人申告登記」
相続手続「相続登記の申請が義務になると聞いたが、どのように対応すればよいか」
「相続登記の申請が義務化された場合、相続登記をしなければいけないのか」
このようなご質問は、多くのお客様から多く寄せられる質問です。
このコラムでは、相続登記の申請の義務化・相続人申告登記についてご説明します。
目次
1 相続登記の申請の義務化とは
⑴ 所有者不明土地問題
昨今新聞などでも取り上げられることがある「所有者不明土地問題」とは、不動産登記簿により所有者が判明しない、または、判明しても連絡がつかない土地をいいます。
国土交通省の調査結果によれば、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しなかった土地の割合は約20パーセントであり、民間の所有者不明土地問題研究会最終報告によれば、平成28年時点における全国の所有者不明土地の面積は、九州本島の土地面積(約367万ha)を超える約410万haにのぼり、このまま所有者不明土地問題の解決が図られない場合、2040年には約720万haにのぼるであろうとされています。
このまま所有者不明土地問題を放置すれば、土地の有効な利活用が困難になることは明らかといえます。
⑵ 相続登記の申請の義務化
このような所有者不明土地問題の発生拡大の主な原因は、土地の所有者亡き後に相続登記がなされないことや所有者の住所変更登記がなされないことにあると考えられていることから、この対策として不動産登記法の改正により、「相続登記の申請の義務化」が図られることになりました。
具体的には、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、この相続により所有権を取得した人は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」(例えば、子らが父/母の死亡を知り、かつ、父/母の遺産に不動産があることを知っていた場合から3年以内など)に所有権の移転の登記を申請しなければならないなどの義務が設けられました(改正不動産登記法76条の2第1項、同条第2項)。
2 相続登記の申請の義務を怠るとどうなるのか
相続登記申請をすべき義務があり、かつ、相続人の把握・戸籍収集に多くの時間を要する場合や遺言の有効性や遺産の範囲が争われているなどの「正当な理由」がないにもかかわらず、この申請をしない場合、「10万円以下の過料」に処することとされています(改正不動産登記法第164条第1項)。
3 相続登記の申請の義務を果たすにはどのようにすればよいのか
「相続登記の申請」の義務であることからも明らかなとおり、この義務を果たすためには、(他の相続人の協力を得なくても一人でできる)法定相続分での相続登記の申請などをすることになります。
ですが、このような法定相続分での相続登記は、被相続人の出生から死亡までの戸籍等を取得する必要があるなど事務手続の負担が大きく、このような相続登記申請をしなければならないとすると酷であるばかりか、結局、所有者不明土地問題の解決に資することがないことにもなりません。
このようなことから、今回の不動産登記法の改正では、事務手続の負担ができる限り軽くなるよう、相続登記の申請に代わり、自らが所有権の登記名義人であることを申し出ることにより、この義務を果たしたこととなる「相続人申告登記」という手続が新たに設けられました。
相続登記の申請義務を果たす(10万円の過料の制裁を避ける)ためには、この手続の利用を検討することも考えられるところです(ただし、あくまでも相続が開始したことと法定相続人とみられる者を公示するだけで、相続等による権利の移転を公示するものでないことには留意が必要です。)。
4 相続登記の申請の義務化はいつからか
相続登記の申請の義務化が始まるのは、「令和6年4月1日」からとなります。
ただ気を付ける必要があるのは、義務化の対象となる相続等は、令和6年4月1日以前に発生したものも含まれる(お亡くなりになったのが令和6年4月1日以前であっても当浮き申請義務は負うことになる=さかのぼって改正不動産登記法が適用される)ということです。
このさかのぼっての適用には、猶予期間(改正不動産登記法附則第5条第6項等)が設けられていますが、猶予期間がいつまでかはケースごとに判断する必要がありますので、迷われた場合には一度弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
5 遺産分割の弁護士費用の相場と当事務所の弁護士費用
⑴ 弁護士費用の相場(税別)
遺産分割に関する弁護士費用は、各事務所が自由に決定することができます。
そのため、画一的な価格は存在しません。
そのなかで、ひとつの相場となるのが、かつて弁護士費用を日本弁護士連合会が定めていた時代に使用していた「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」です。
こちらの基準では、弁護士費用を、事件又は法律事務の依頼を受けたときに生じる「着手金」と事件等の処理が終了したときに生じる「報酬金」に分けて説明しております。
同基準に基づくと、遺産分割の弁護士費用は次のとおりとなります。
対象となる相続分の時価相当額 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下の部分 | 8% | 16% |
300万円を超え3、000万円以下の部分 | 5%+9 万円 | 10%+18 万円 |
3、000万円を超え3億円以下の部分 | 3%+69 万円 | 6%+138 万円 |
3億円を超え部分 | 2%+369 万円 | 4%+738 万円 |
⑵ 当事務所の弁護士費用(税込)
旧日本弁護士連合会の基準によると、例えば、不動産が遺産に含まれる場合、対象となる相続分の時価相当額は、相当高額になり、ご依頼し辛い場合がございます。
そのため、当事務所では、旧報酬基準を若干変更し、よりご依頼をしやすい費用形態としております。
具体的には、当事務所の遺産分割問題の報酬基準は次のとおりです。
対象となる相続分の時価相当額 | 着手金 | 報酬金 |
---|---|---|
300万円以下の部分 | 交渉 22万円 調停 33万円 ※交渉から調停に移行した場合は、別途22万円 |
22% |
300万円を超え3、000万円以下の部分 | 11%+33万円 | |
3、000万円を超え3億円以下の部分 | 6.6%+165 万円 | |
3億円を超え部分 | 4.4%+825 万円 |
6 おわりに
法定相続分で登記をしたり、相続人申告登記をしたとしても、本改正の登記義務を一応みたすのみで、抜本的な問題の解決にならない場合があり、ゆくゆくは正式な遺産分割協議を行う必要があります。
そのため、相続登記の義務に関する問題の解消と並行して遺産分割協議の実施も検討する必要があります。
現在、生前の相続対策をお考えの場合は、遺言書を作成することで、将来的に相続人が相続登記義務で悩まないようケアすることも考えられます。
まずは、不動産を相続し(あるいは現在不動産を所有して相続が将来的に発生する場合)、一度弁護士に相談しても良いかもしれません。
登記自体は当事務所では扱いはありませんが、提携している相続登記を多く扱う司法書士もおりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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