弁護士法人葛飾総合法律事務所

「内縁の妻・夫に相続権はあるのか。遺産を遺すための方法を解説」

遺産

「内縁の妻がいる。自分が死んだあと、遺産を内縁の妻に遺したい。通常の夫婦と同様、特段の手続をすることなく、内縁の妻に相続させることはできるのか。」
 
このようなご相談をいただく場合がございます。
このコラムでは、内縁の妻・夫の相続権の有無、遺産を遺す方法について解説します。
 

1 内縁の妻・夫には相続権は認められない

「内縁」とは、法律上の婚姻届出が行われていないものの、男女が協力して夫婦としての生活を営んでいる状態をいいます(内縁自体は民法に規定はありませんが、最高裁昭和33年4月11日判決により「婚姻に準じる関係」として認められています。)。
内縁と法律上の婚姻との違いは、単に婚姻届が提出されているかどうかの点にあり、男女が協力して夫婦としての生活を営む点においては、両者に差はありません。
しかし、内縁の夫・妻は、その一方が死亡した場合でも相続権は認められていません。
民法上、死亡した人の「配偶者」は相続人となりますが(民法890条)となりますが、内縁の夫・妻はここでいう「配偶者」には当たらないためです。
 

2 内縁の妻・夫に財産の遺す方法

法律上、内縁の妻・夫には相続権はありません。
では、内縁の妻・夫に財産を遺すためにはどうすればよいのでしょうか。
以下では、財産を遺す方法を紹介します。
 

① 生前贈与を受ける

被相続人が内縁の妻に何らかの財産を遺したいと思うのであれば、まず、生前に財産を贈与するという方法が考えられます。
贈与契約とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をする契約のことをいいます(民法549条)。
もっとも、税務上、贈与契約の非課税枠は、年間110万円までとなります。
そのため、贈与による対策は、年間の非課税枠を活用して、長期的に取り組むことがポイントなります。
また、双方贈与と認識のうえ、贈与契約書を作成しておかないと、税務署にいわゆる名義預金(名義だけが受贈者であり、実質的には贈与者の預金)として取り扱われ、課税されるリスクがあるため、注意が必要です。
 

② 遺言書により遺贈を行う

被相続人は、民法上の法定相続分の規定にかかわらず、遺言によって自らの遺産を贈与することができます(民法964条)。
これを「遺贈」といいます。
遺贈は誰に対しても行うことができるため、内縁の妻・夫を遺贈の相手方として指定することも可能です。
内縁の配偶者に遺贈をした場合も、相続税の納付義務が生じることは注意が必要です。
この場合の相続税の計算方法は、通常の配偶者が相続した場合と異なる点が多々ある(相続税の2割加算等がある)ため、税理士等の専門家にご相談いただくことをお勧めします。
 

③ 生命保険を活用する

内縁の妻・夫に財産を遺す方法として、生命保険の受益者、つまり死亡保険金の受取人として内縁のパートナーを指定するという方法も考えられます。
死亡保険金は、内縁のパートナーに直接支払われます。
相続財産とは別に受け取ることができるため、遺産分割などの手続を経る必要がありません。
なお、内縁のパートナーが死亡保険金等を受け取る場合、相続税が課税されます。
相続人の場合は相続税の非課税金額に該当する部分について相続税が非課税となります(具体的には、500万円 × 法定相続人数が非課税となります)が、内縁の場合は非課税金額の適用はないため注意が必要です。
 

④ 遺族年金を受け取る

遺産の承継以外にも、内縁のパートナーは、厚生年金の遺族基礎年金や国民年金の遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。
厚生年金法や国民年金法は、「被保険者の死亡当時、被保険者によって生計を維持していた」者であれば、「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」であっても、遺族年金の受給権者となることができるからです(国民年金法2条7項、37条1項、37条の2第1項、厚生年金法3条1項、第58条1項、59条1項)。
事前に年金事務所にご相談をされることをお勧めいたします。
 

⑤ 特別縁故者として遺産を受け取る

内縁のパートナーの法定相続人が一人もいない場合、財産は原則として国庫に帰属してしまいます。
しかし、内縁の妻・夫が家庭裁判所で「特別縁故者」の手続をとることで、遺産の全部又は一部を受け取ることができる可能性があります(民法958条の3第1項)。
特別縁故者として遺産を受け取った場合も、相続税が課税される点も注意が必要です。
 

3 配偶者居住権は内縁の配偶者にも適用されるのか

令和2年に施行された改正相続法で、配偶者居住権や配偶者短期居住権が定められました。
配偶者居住権とは、残された配偶者が、被相続人の所有(又は夫婦共有)の建物に居住していた場合、一定の要件を充たせば、被相続人が亡くなった後も、配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です(民法1028条1項)。
配偶者短期居住権とは、残された配偶者が、被相続人の所有する建物に居住していた場合、引き続き一定期間、無償で建物に住み続けることができる権利です(民法1037条1項)。
これらの権利は、法律上の配偶者のみに認められる権利なので、内縁関係には適用されません。
もっとも、内妻においても従前の居住態様によっては、居所の所有者との間で黙示的に使用貸借契約が成立していると認定できる場合もある(大阪高等裁判所平成22年10月21日判決参照)ため、配偶者居住権としての使用は難しくとも、結果的には使用貸借として使用を継続できる場合があるため、そのような場合は弁護士までご相談いただくことをお勧めします。
 

4 おわりに

今回は、内縁の妻・夫の相続権の有無、遺産を遺すための方法について解説しました。
内縁関係について何か少しでもお悩みの際は、当事務所でお力になれる可能性がありますので、まずはお気軽に弁護士までご連絡いただければと思います。
 

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この記事の著者

弁護士法人葛飾総合法律事務所

代表弁護士角 学 (東京弁護士会所属)

千葉県出身です。葛飾区金町のお隣の松戸市に住んでいました。
中学、高校は、都内の巣鴨学園で遠泳・古式泳法・登山・剣道等様々な分野に取り組みました。
司法試験合格後、しっかりとした弁護士の基礎を身につけたいと思い、港区の大手法律経済事務所に就職し、元裁判官や元検察官、現役の弁護士職務経験裁判官、検察官をはじめとする先輩弁護士の方々に学びました。
その後、弁護士として、トラブルに困っている方々のお力になりたいと考え、地元にほど近い葛飾区金町で独立をいたしました。

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